スリングバッグ バンガードBIIN47レビュー
リュックに代えてロープロのスリングショット300AWを使っており、
スリングバッグの使い勝手の良さには満足している。
レンズ交換時などにいちいちバッグを下ろさずに済むのは快適だ。
そしてこの特長は、 スナップや気軽な撮影にも向いていると感じた。
スリングショット300AWや302AWはスリングバッグとは思えない大容量でカメラリュックの代わりになる程の物だが、
もっと小柄で日常の撮影にも使いやすいスリングバッグも購入することにした。
なお、 スリングバッグと言っても色々な形のものがあるが、
ショルダーバッグのスリングバッグ版のようなものは容量が少なく、
ボディ+レンズ1本といった本当のお散歩用途でないと難しそうなので今回は対象には加えなかった。
ロープロ スリングショットとバンガード BIIN
ロープロ スリングショットは販売店で目にする機会も一番多いし、 現在300AWを使っているので安心感はあるのだが、
小型のバッグには次のような点を求めたので無条件でロープロのものを購入するわけにはいかなかった。
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あまりカメラバッグっぽくないものが欲しい
他の製品と比べればデザインは洗練されている気はするが、
102AW/202AWの見慣れない縦長の外観は「何らかの道具が入っている!」というオーラは隠せない。
302AW/300AWくらいの大型タイプならどうせオーラ全開なので諦めも付くのだが(笑)、
街中で使うことも多いであろう小型のものでは、 むしろ野暮ったくても良いからカメラバッグらしくない方が私の好みだ。
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なるべく薄い方が良い
街中で使うことを想定しているので、
奥行きが小さい方が身動きが取りやすいし人の迷惑になりにくい。
電車内などですぐに前に抱えられるというのもスリングバッグの利点ではあるのだが、
必要な機材を収納できる範囲で薄い方が良いのは当然だ。
これらの理由で候補に挙がったのがバンガード(Vanguard)の「BIIN
37」と「BIIN
47」だった。
比較
バンガードBIINシリーズのスリングバッグやバックパックはややアウトドア寄りのデイパックといったデザインでまとめられており、
そういう系統が好きかどうかは人によるだろうが無難ではある。
…というか、 あまりスタイリッシュだとむしろ自分の服装に合わないことも懸念される…。
お洒落な人にはこんなのも…アップル公認で知られるインケースのSling
Pack for DSLR camera。 アップル公認という方向性からして私とは相性が悪い気がする^^;
とまぁ、 見た目ではバンガードのBIINは大いにアリだと思った。
あとは肝心の使い勝手だ(順番が逆?)。
カメラバッグの使い勝手は、 もちろんちゃんと考えられたものと適当に考えたものとでは大きな差があるのだが、
それ以前に全体と収納部の寸法は重要だ。
ところが、
バッグの寸法表記…特に内寸(収納部の寸法)はW(幅)・H(高さ)・D(奥行き)で表示されてもわかりにくい。
運搬時と使用時で縦横が変わるスリングバッグでは尚更だ。
で、 どうやらカタログに表記されているこれらの数値は、 バッグの外寸のW・H・Dと同じ方向に対応しているようだ。
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外寸 |
内寸※ |
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|
W |
H |
D |
W |
H |
D |
ロープロ
スリングショット |
202AW |
250 |
450 |
255 |
225 |
280 |
140 |
102AW |
210 |
405 |
220 |
160 |
260 |
110 |
バンガード |
BIIN 47 |
230 |
380 |
210 |
190 |
250 |
130 |
BIIN 37 |
↑ |
320 |
↑ |
↑ |
170 |
↑ |
※「内寸」はメイン収納部の寸法
スリングショット102AWのメイン収納部のD=110mmだと高さが115mm程度あるEOS5Dは入らない。
BIIN37/47、 スリングショット202AWなら入る。
しかし、 202AWの外寸D=255mmというのはかなり大きい。
何しろ私のフル装備を収納できる300AWより分厚いのだ。
高さ(H)も300AWとほぼ同じ程度あるので、背負ったらジェットを吹き出して空を飛べそう^^;
かと言ってEOS1DシリーズやニコンD一桁のようなプロ機やバッテリーグリップを装着したEOS5Dが入るわけではないので、
カメラボディの収納性に限って言えば帯に短したすきに長しという感がある。
上にも書いた通り、 人が多い場所で使う可能性を考えると、 自分の必要以上に厚みがあるのはかえって不便なのだ。
これらバンガードの2製品(BIIN37とBIIN47)は内寸・外寸ともHだけが違う。
つまりBIIN47はBIIN37をほぼそのまま縦に伸ばしたものということ。
どちらもバッテリーグリップを装着しない状態のEOS5Dが入る。
外寸の奥行き(D)もロープロの2製品より薄い。
この時点で選択はバンガードの2製品に絞られた。
この種のバッグで持ち歩きたい機材の量は人によって違うだろうが、
高さ(H)が増える分には取り回しが悪くなることはほとんどないと思われる。
そして何より、 高さが小さいBIIN37だと大人が子供用のリュックを背負っているような見た目になってしまいそう。
結果、 消去法でBIIN47を購入した。
Vanguard BIIN47インプレ
届きました。
…何を隠そう、 私は現物を見ずに購入したのだ。
ロープロのスリングショットはさすがに大きな店ならどこでも置いてあるが、
バンガードのスリングバッグは東京でさえ現物を見る機会がなかった。
バックパックは3大カメラ店(の生き残った2店)なら置いてあるのだが…
グリーンを選んだからだろうが、 届いた箱を開けて真っ先に頭に浮かんだのが「ハナムグリ」であった。
「ハナムグリって何?」という方は余計な連想をしてしまう心配もないのであえて知る必要はない^^;
それでも知りたい人は・・・→●
メイン収納部
…それはさておき、 早速スナップ撮影等で使いそうな機材を入れてみる。
左からEF200mm F2.8L USM、 EF50mm F1.8、 シグマ24mm F2.8 SUPER-WIDE IIを収納
。
もう1本行っとく?という程度の余裕がある。
実際、 取り出しの利便性を考えないならボディ+EF50mm F1.8の先のスペースにタムロン90mmマクロが入る。
次はズームが主体になる組み合わせ。
左から、全部タムロンでSP70-300mm F/4-5.6 Di VC USD(A005)、
SP AF24-135mm
F/3.5-5.6(190D)、 SP AF90mm F/2.8 Macro 1:1(172E)。
70-300mmも24-135mmも比較的大柄なレンズで、 やはり太いレンズが複数あると窮屈になる。
しかしこれはメイン収納部と上部の仕切りを少し動かすことで大幅に改善することができる(後述)。
ざっくり言えば、 ある程度までの太めのズーム2本と広角〜中望遠の単焦点1本までが収納できる感じ。
私は身軽さ優先で標準ズームを省いて次のようなセットで出掛けることがあるが、 この組み合わせもちゃんと収納可能だった。
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タムロン SP AF20-40mm F/2.7-3.5(166D)
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タムロン SP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD(A005)
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状況に応じてシグマ24mm F2.8かEF50mm F1.8かタムロン90mmマクロのいずれか
これより太いレンズを使う場合 …例えば標準ズームを純正24-70mm F2.8にするとか… だと、
収納はできそうだが本当にギリギリになると思う。
その場合は残り2本をあまり大口径でない単焦点にするとか、 標準ズーム+望遠ズームの2本にするというのが現実的かもしれない。
なお、
メイン収納部の開口部にはメッシュのこぼれ止めが付いている。
スリングバッグではこれは絶対にあった方が良い。
ロープロ スリングショットを使って真っ先に「こうしてくれればいいのに」と思ったのがここだった。
スリングバッグのメイン開口部はバッグを体の前面に回したときに垂直かつ体の前方になるので、
開けた状態で前に屈むと機材がボトボトと落下する危険がある。
このような機構があれば仕切りからは落下しても地面までは落とさずに済む。
このバッグの場合はサイズが小さいのでここを開けなくても機材へのアクセスはしやすいけれど。
なお、 メイン開口部とカメラ取り出し口がつながっているロープロ スリングショットでは
カメラ取り出し口までしか開かないようにするストッパーが付いているが、 意図的に開けた場合は何の安全対策にもならない。
せめて全開にならないように自分でゴムバンドでも取り付けようかと思っている。
上部気室
次にバッグ上部の収納部分。
ロープロスリングショットのような気の利いたポケット等は特に装備されていない。
ただし壁面?にベルクロがくっつくので自分で何とかする(まさにDo It Yourself)ことはできる。
容量としては、
ちょうどEOS5Dのボディが入る位のサイズ。
普通はわざわざこういう使い方はしないだろうが、 空間サイズがわかりやすい例ということで。
特筆すべき点として、 メイン収納部との仕切りが移動可能なので、
メイン収納部の容量が不足する場合は上部のスペースを「都合してもらう」ことができる。
実際、
太めのレンズが複数あるとメイン収納部がかなり窮屈になるが、 仕切りを移動させるとメイン収納部の出し入れがかなり快適になった。
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この写真では仕切りをかなり移動させている
メイン部と上部気室にまたがって収納されているのはタムロンSP70-300mm F4-5.6 Di VC
USD。 |
ここまで移動させると、 フード付きの太いレンズ2本+単焦点1本といった組み合わせでも多少の余裕を持って収納できる。
レンズ交換時は3分割したメイン気室のどこかは必ず空なので取り出しにも問題はない。
なお、 この仕切りは背当て側がバッグ本体に縫合されていて取り外すことはできないが、
完全に跳ね上げてしまえば取り外したのとほぼ同じ状態になる。
全長20cmを越えるような長いレンズも工夫次第では収納できるかもしれない。
どうやって取り出すかという問題はあるけれど。
側面メッシュポケット
側面にあるメッシュポケットを使って一脚や小型の三脚を持ち歩くことができる。
写真はベルボンのMAX-i 343ESという三脚を取り付けたところ。
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そう、 私は緑色が好きだ^^; |
後述のループ部にベルクロ付きのベルトを通して固定している。
これらは最初からは用意されていないので各自工夫することになる。
公式ページにもあるがサイドのメッシュポケットに500mlペットボトルを入れたところ。
カメラバッグは現物を目にしないと実際のボリュームがわかりにくいが、 身近なものと大きさを比較するとイメージしやすいと思う。
拡張性
下の写真の矢印で示した箇所がループになっており、 カラビナやリング・ベルト類を取り付けられる。
側面のメッシュポケットに一脚等を収納する場合はこのループ部にベルクロやバックルが付いたバンドを装着すればしっかり固定できる。
固定用ストラップ
自転車での移動や登山など激しい動きをする際バッグが動かないようにする3点支持用のストラップが装備されている。
下の写真だとウェストベルトのように見えるが実際は胸からみぞおちの辺りで交差する。
体格に合わせて交差する位置を調整できるようになっている。
写真の通り使用しないときはこのストラップは収納しておける。
また、 使用時にストラップの余りを束ねておくためのベルクロ(いわゆるマジックテープ)のバンドが付いている。
使用イメージ (2012/8/20追記)
バッグ類は、 現物を見ないと実際の大きさのイメージが掴みにくいことがある。
もちろんカタログには数字では寸法が表示されているが、
「今使っているものと比べてどの程度差があるのか」といったことを感覚的に知りたいこともある。
実際に背負っているところを見ると人間の大きさとの比較である程度の感覚は掴める。
というわけで、 BIIN47を使用しているところを (連れが勝手に) 撮影した写真があったので掲載。
単体で見ると結構小さい印象なのだが、 実際に背負っているところを見るとそうでもない。
…人ごとみたいな言い方だが、 何しろ私自身、 自分が使っているところはこの写真で初めて見たのだ^^;
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以下サイズ比較用の参考データ:
・スリングバッグを背負っている縞々のおじさんは身長170cm・細身
・ぶら下がっているペットボトルは500mlより少し大きい600mlのもの |
まとめ
スリングバッグを必要とするかどうかは人によるだろうし、 一部の製品を除いては大量の機材を収納できるわけでもない。
割り切って機材をレンズ3本程度までに絞り込める人でないと不向きだと思う。
しつこいようだがスリングショット30xAWは同等サイズのリュックと同じ位…スリングバッグとして成り立つ限界に近いほど機材を詰め込める
が、 今回のものとはカテゴリーが違う。
以下はバンガード BIIN47/37について。
この辺りのサイズのスリングバッグを検討している方ならロープロのスリングショット102AW/202AWは当然のごとく候補に含まれていると思うが、 BIIN47/37にはロープロほど気の利いたポケット等は装備されていない。
もっとも、 これらの小型のバッグの場合、
最初からあれこれ付いていてスペースを食うよりは自分の好きなようにカスタマイズする方が便利かもしれない。
また、 細部の造りなどは明らかにロープロの方が上。
特にスリングバッグでは着脱の機会が多いメインのベルトのバックルの質感など、
値段なりの差はある。
重量機材を入れるようなサイズではないので強度的には問題ないとは思うが。
逆に、 クッションの厚みの差か、 バンガードBIINは外寸の割に収納容量は大きいので、
実用上どちらが上とは言えない。
両者は全く見た目も違うので結局はお好み次第ということだろう。
ただ、 両社それぞれの2製品のうちでは、
ロープロなら202AW、 バンガードならBIIN47をお勧めする。
102AW、 BIIN37は必要以上に小さい感があり、 入れられる機材の制約があまりに大きすぎる気がする。
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