コンパクト三脚を選ぶ
〜ベルボンULTRA MAXi/ULTRA LUXi等
今まで、お手軽三脚としてベルボンのMAX-i 343ESという製品を使っていた。
MAX-i
343ESはコンパクトな見た目に反してそれなりの剛性は確保しており、雲台さえ交換すれば中型一眼レフでの使用にも耐えるものであった。
ローアングル対応などの付加機能は一切ないシンプルな構成だが、全高が低い点を除けば良くできている。
しかしやはり、エレベーター不使用時の高さが腰あたりというのは制約もある。
私がMAX-i
343ESを購入したのは7,8年も前で、当時は縮長40cm程度、重量1kg程度という三脚はあまり選択肢がなかったと記憶している。
しかし最近は昔よりライトユーザーが増えたのかコンパクト三脚の選択肢は大幅に増え、各社色々なアイディアを投入してしのぎを削っている。
そのようなわけで、そろそろ買い換え時だろうということで、現在手に入るコンパクト三脚について調べてみた。
比較方法について
以下の比較では、基本的に「脚のみ」について考慮している。
これは、どの製品もセットの雲台が好みに合っていなかったことによる。
私はクイックシュー付きの雲台が好きではない。
クイックシュー自体は便利だし積極的に使えばいいと思うのだが、クイックシューはモノによって使い勝手が大きく違う。
安価なクイックシューは色々と使いにくい点があったりする。
一番問題なのは、安価なものは迅速にしっかりシュープレートを装着できるものはほとんど無いということ。
なので必然的に最初からボディや三脚座にシュープレートを装着しておくことになるのだが、特に樹脂製のシュープレートは厚みがあり、手持ちでの撮影時に手に当たって邪魔なことが多々ある。
邪推すると、特に自由雲台でない場合、ちゃんとカメラネジを締め込める機構を搭載すると重くなったりコストが上がったりするため、コイン等を使って締められれば許されるクイックシュー付きの方がメーカーにとっても都合が良いという部分があるように思う。
しかし、このクラスの三脚で付属の雲台が非クイックシューのものは今はほとんどない。
なので、付属する雲台についてあれこれ考えるのはやめて、雲台は好みのものに交換する前提で、付属雲台については不問というか無視して脚のみ
で比較することにしたというわけだ。
比較表
自分の用途に合いそうなものに絞り込んだ結果、奇遇にもベルボンの製品だけが残った。
ULTRA LUXi L IIというモデルがあるが、これは一部量販店専用モデルとしてULTRA LUXi
Lの雲台を自由雲台に変更したもので、脚自体は表記文字を除いてはULTRA LUXi Lと同一である。
ちなみに「LUXi」は「ルックス・アイ」と読む。
なお、以下の表においても、原則として「脚だけ」のスペックで比較している。
-
質量(脚のみ)…
全体の質量から付属雲台のカタログスペック上の質量を引いたもの
-
伸縮ロック方式…
「ロックレバー式」というのは、昔からある、レバーを起こすと伸縮がフリーになり、レバーを倒すと固定されるもの。
「ダイレクトコンタクトパイプ」方式はベルボン独自の方式で、仕組みはさておき、脚のパイプを一方に回すとフリーになり、逆に回すと固定されるという方式である。
-
付属雲台…
「カメラ用雲台」というのは、自由雲台でない、迎え角・傾き・パンの可動部が独立して存在するものという意味。
ハンドルが3本あるとは限らないので「3way」と書くと語弊があるため。
-
例外として「縮長」は付属雲台を含んだ数値
脚のみの全高は雲台を水平にした場合なので付属雲台の高さを引けばわかるが、縮長は短く表記したいだろうから雲台を畳んだ状態であると考えられる。
そのため、脚のみの縮長というのはカタログではわからない。
-
表中で緑色に塗られているのは、その項目において最も優れているもの。
|
(参考)
MAX-i 343ES |
MAX-i
347GB |
ULTRA
MAXi L |
ULTRA
LUXi L |
ULTRA
LUXi L II |
脚のみ全高
(EV不使用) |
92cm(実測) |
120cm |
121cm |
127cm |
← |
脚のみ全高
(EV使用) |
116cm(実測) |
152cm |
146cm |
152cm |
← |
縮長
(付属雲台含む) |
37cm |
43cm |
36cm |
39cm |
40cm |
質量
(脚のみ) |
約700g |
960g |
750g |
890g |
← |
伸縮ロック方式 |
ロックレバー式 |
ロックレバー式 |
ダイレクト
コンタクト
パイプ |
ダイレクト
コンタクト
パイプ |
← |
段数/パイプ径 |
4段 20mm |
4段 20mm |
5段 21mm |
5段 24mm |
← |
ローアングル対応 |
× |
× |
○ |
○ |
← |
付属雲台
自重 / 推奨重量 |
自由雲台
PH-243
? / ?
一眼レフでは難あり |
カメラ用雲台
PHD-31Q
240g / 2kg |
← |
カメラ用雲台
PHD-41Q
430g / 3kg |
自由雲台
QHD-51Q
190g / 1.5kg |
ULTRA MAXi L と ULTRA LUXi L
全高からすると驚異的に軽量・コンパクトなULTRA MAXi
Lだが、店頭で実物を見たところ、さすがに5段・パイプ径21mmという構造は一眼レフ用としてはエレベーターを使わない状態でも明らかに強度が不足している感じだった。
一眼レフで使う場合は、本当の意味での旅行用といった割り切った用途に限られる印象。
今回はもう少し写真撮影寄りの用途を想定しているので対象外とした。
ULTRA MAXi LとULTRA LUXi
L(えーい紛らわしい!)は操作方法や見た目が似ているためにどちらにするか迷う人も多そうなのだが、実際に触ってみるとULTRA
MAXi LとULTRA LUXi
Lは実は別カテゴリーの製品という気がする。
そして、結構重要なのに見落としがちだが、
この2製品のカタログスペックでの重量は990gと1320gでLUXiの方が330g重いのだが、
これはセットになっている雲台の違いの方が大きく、 実はULTRA MAXi LとULTRA LUXi Lの重量の差は脚のみで比較すると実は140gでしかない。
ULTRA LUXi L と MAX-i 347GB
というわけで、(同じメーカーだが)本当に競合するのはMAX-i 347GBとULTRA LUXi Lだと思った。
前者は古典的なロックレバー式で自由雲台、後者はダイレクトコンタクトパイプ方式で3way雲台と見た目はかなり違うのだが、逆にそれ以外のスペックはかなり近い。
強度の点でも、4段・パイプ径20mmと5段・24mmというのはどちらが上か判断が難しい、つまり近い性能なのだ。
全高もエレベーター使用時は全く同じ152cm。
しかし、ただでさえ華奢なこのクラスの三脚だから、エレベーターを使わずにどこまでの高さになるかも重要ではある。
脚の強度については、厳密に比較すれば4段・20mmのMAX-i 347GBの方が上のような気もしたが、ULTRA LUXi
Lと同じ高さにするためにはエレベーターを伸ばす必要があり、脚の強度の差は相殺されてしまうかもしれない。
(7cm程度の差ならその分自分が屈めばいいと思われるかも知れないが、特に超広角レンズでは視点の高さが数cm違うとかなり違った印象の写真になることが
しばしばある)
結局選んだのは…
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今まで使っていたMAX-i 343ESとULTRA LUXi L
ULTRA LUXi Lの方が一回り大きく見えるが両者の縮長の差は2cmでしかない(同一雲台装着時)。 |
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縮長の差はたった2cmだが全高はこれだけ違う。 |
この2者で最後まで迷ったが、やはりある程度は軽くあって欲しいことと、縮長40cm程度を境に色々なバッグですっぽり入るか入らないかが分かれるということもあり、ULTRA
LUXi Lを選んだ。
これは私の周りのもので調べただけだが、写真とは関係なく私が常用しているバックパックもトートバッグも40cm弱までは完全にバッグ内に収まる。
なお、上でも書いたが私はクイックシュー付きの雲台が好きではないので、実際に購入したのはULTRA LUXi
Lの「脚のみ」である。
あまりそういう買い方をする人は多くないとは思うが、それでも「脚のみ」をラインナップしているのは良心的。
「脚のみ」にしたのは、クイックシューの問題以外に、ULTRA LUXi
L(雲台セット)に付属する2ハンドルの雲台「PHD-41Q」は風景写真でも十分使えそうな物だが重さ430gというのは小型三脚にはちょっと立派すぎる
、というのもある。
スペック上の軽さのために使い物にならない雲台をセットにされるよりは余程良いのだけれど。
なお、この雲台が原因で、カタログスペックだけを見ると他のコンパクト三脚より相当重い印象になっている部分があるかもしれない。
ULTRA LUXi Lの付属雲台装着時の総重量は1320gだが、実は脚自体はULTRA MAXi
L(総重量990g)より大幅に重いわけではないのだ。
当たり前のことではあるのだが、これは自分でもちゃんと調べるまでは盲点だった。 上でも書いたが、同じ雲台を使うならULTRA
MAXi Lとの重量差は140gでしかない。
ULTRA LUXi L
これを選ぶ決め手になったのは、やはりエレベーター非使用時の全高の差だった。
脚のみの全高が127cmあれば、中型一眼レフに対応できる雲台を取り付けた場合の全高は135cm程度になる。
更にボディ底面からファインダーまでの高さを加えると145cm弱になる。
身長とアイレベルの差は15cm程度(実測(笑))なので、身長を170cmとすれば目の高さは155cmで、アイレベルとまでは言えないものの少しだけ上半身を屈めば楽にファインダーを覗くことができる。
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ULTRA LUXi L エレベーター非使用時の全高
モデルこと私の身長170cmだが、エレベーターを使わなくても少し屈めばファインダーを覗ける高さがある。
…三脚にカメラをセットして、セルフタイマーで「自分が写真を撮ってる様子」を撮るというのは非常に恥ずかしかった^^; |
使い勝手
ダイレクトコンタクトパイプ方式について
ULTRA LUXiの「ダイレクトコンタクトパイプ」方式については、強度的にはロックレバー式とほとんど変わらないようだ。
ただし、やはり伸縮させたいパイプをダイレクトに操作できるという点ではロックレバー式の方が操作性は上。
また、伸ばす際の迅速性については、石突きを捻るだけで全てフリーになるダイレクトコンタクトパイプの方が早そうに思うかもしれないが、ロックレバー式は4段なら4個のレバーを掴んで一気にフリーにすれば勝手に伸びるので、迅速性という点でも特にメリットは無いと思う。
先端の1段を縮めれば、パイプが太い分MAX-i 343ESより剛性が高いはずだが、ダイレクトコンタクトパイプ方式は各パイプごとにロックするレバー等は無いので、任意の1段だけ伸縮させるのが
非常に面倒。
そもそも最初は、どうやれば先端の1段だけ伸縮できるか悩むと思う。
原理がわかれば方法はわかるのだが、普通のロックレバー式の数倍の手間が掛かるのは間違いない。
あくまでも小型軽量化のための手法というのが本当のところだろう。
総評
元々使っていたMAX-i 343ESの4段からULTRA LUXi
Lでは5段になって剛性の低下も心配したが、最大パイプ径が24mmと太くなっていることもあってエレベーター非使用時の剛性ではMAX-i
343ESと大差ないレベルにはなっている。
それでいてエレベーターを使わずにアイレベルに近い高さを出せるのだから非常に優秀な製品である。
300mm以上の望遠に耐えるほどの剛性はないが、それを除けば、使用にあたって無理な姿勢を強いられることもなく、日常使用にも耐えうる三脚だと思う。
追記
ULTRA LUXi Lの後継となるULTRA 455が発売されている。
しかしULTRA LUXi Lとの比較で魅力的な部分がほとんどないような…
一応、 ボディ部分と雲台のリニューアルでより堅牢になったと謳っている。
|
ULTRA
LUXi L |
ULTRA 455 |
|
参考
ULTRA 455S |
脚のみ全高
(EV不使用) |
127cm |
128cm |
109cm |
脚のみ全高
(EV使用) |
152cm |
153cm |
130cm |
縮長
(付属雲台含む) |
39cm |
42.5cm |
38.5cm |
質量
(脚のみ) |
890g |
1000g |
920g |
伸縮ロック方式 |
ダイレクト
コンタクト
パイプ |
← |
← |
段数/パイプ径 |
5段 24mm |
← |
← |
ローアングル対応 |
○ |
○ |
○ |
付属雲台
自重 / 推奨重量 |
カメラ用雲台
PHD-41Q
430g / 3kg |
カメラ用雲台
PH-G40D
438g / 3kg |
← |
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