タムロン70-300VCの露出問題を検証する

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鳴り物入りで登場したタムロンSP70-300mm F/4-5.6 Di VC USDは、 発表直後から購入をほぼ決めていたレンズだ。 特にキヤノンユーザーにはそういう人も多いと思われる。

ところで、 最初にニコン用が発売された時から、 ネット上ではこのレンズの露出がバラつくという話があった。 単に露出がバラつくと言われても色々な状況が原因が考えられるし、 カメラ側のAEの挙動の話とごっちゃになっているものもあったりで、 何だかよくわからんという状況だった。

その後友人が購入したキヤノン用に触れる機会があり、 おおよその状況は掴めた。 結局は 「絞り開放付近でアンダー露出になる」ということのようで、 これはある程度までなら大した問題ではない。 自分でテストした中でも数本思い当たるレンズがあり、 実用上は不自由なく使えていたからだ。

なので今回、 本当に「絞り開放付近でのみアンダーになる」 のかどうか、 そして、 そうだとしたらそれはどの程度なのかを確かめた。 何事も程度問題で、 上記の通りある程度までは私には問題ないし、 逆に万が一1EV以上とかなら製品が不良であると言えるからだ。

もっとも、 そんな話を尻目にさっさと購入したからこのテストができたのであり、 どうせネット上で言われるほど大した問題じゃないんだろうと高をくくっていたのも事実である^^; そして経験上、 大抵それは正解だ。 「どんな製品もネットで言われるほど良くも悪くもない」…そんなものです。

原因と対策

…というほど大したことではないのだが、 「絞り開放付近でアンダーになる」という現象は

・設定したF値より実際の絞りが絞り込まれている

もしくは

・口径食(ヴィネッティング)による陰りで露光量が不足する

のどちらかだと推測できる。

今時そんな絞りはないとは思うが、 万が一前者なら、 この製品の規格から外れているかはともかくある種の不具合と言え、 修理なりこっそり改修なりで改善される可能性はある。

後者の場合、 当初からそういう光学設計である可能性が高く、 メーカーに何を言っても改善される可能性はまずない。

と、 もし問題を解決したければ原因の切り分けというのはとても大事。 本当に不具合ならメーカーに報告すれば良い方向に進むかもかもしれないし、 文句を言う筋合いのものではないけれど気に入らないというなら別のレンズに買い換えるしかない。

補足

当初、 このページでは後者を「周辺減光の影響で〜」と書いていた。 しかし「周辺減光」という言葉からは、 画像中心部には影響がないような印象を受けてしまう。 周辺減光という言葉自体はその通り画像周辺部での光量の低下を意味するのだが、 その大きな原因の一つが口径食であり、 口径食の影響は画像中心近傍にも現れる。 砕けた言い方をすれば、 周辺減光の延長で画像中心部も光量が減少しているのだ。

検証方法について

絞りによる露出の差を調べる方法はいくつか思い付くが、 今回は次のような方法で検証した。

  • レンズ先端にフィルムチェック用のライトボックスを密着させて撮影する

  • 撮影画像の輝度をDigital Photo Professional(DPP)のヒストグラムで確認する

ライトボックスは電源投入後、 輝度が安定するよう暫く(10分程度)待ってから使用した。 また、 DPPのヒストグラム部のEV値の表示がおおよそ 妥当であることは事前に確認してある。 また、 レンズのピント位置は無限遠とした。

実際の画像で比較する

以下は実際の撮影画像とヒストグラム。 絞り開放・1段・2段・3段絞りで、 当然ながらそれぞれが同じ露出値になるシャッター速度に設定して撮影した。 感度はISO100相当固定。 テストはワイド端とテレ端で行った。

ワイド端

F4(開放)

F5.6(1段絞り)

F8(2段絞り)

F11(3段絞り)

確かにF4(開放)とそれ以外では輝度のピークに差があることがわかる。 目盛りが粗いので読み取りにくいが、 絞り開放とそれ以外でのピーク(=中心部)の露光量の差はおおよそ1/3EVといったところで、 さして大きいわけではない。

また、開放以外の絞り(F5.6 F8 F11)では露出はほぼ一定。 実際はもっと絞った状態でもテストしているが結果は同様。

テレ端

F5.6(開放)

F8(1段絞り)

F11(2段絞り)

F16(3段絞り)

テレ端もやはりピークの絞り開放とそれ以外での差は1/3EVといったところ。

もし絞りの精度が悪いなら1段絞り・2段絞り・3段絞り…でも露出がバラつきそうなものだが、 ワイド端もテレ端も絞り開放以外での露出は安定していることから、 絶対とは言えないが絞り機構に問題がある可能性はまずない。

以上のことから、

  • 恐らく口径食の影響で、 絞り開放付近ではアンダーになる(光学的仕様)

  • その量は画像中心部で1/3EV程度

という結論が妥当と思われる。 つまり、 これはこのレンズの光学的な仕様であり、 調整やら修理で改善されるものではないということ。 誤解のないように言っておくと、 「設計上の問題なので改善しようがない」などと言いたいのではなく、 (実用上問題ない程度にそういう特性があるので)自分のレンズが個体不良ではないかなどと心配する必要はない、 という意味だ。

ネット上の情報に関する考察

まぁこのページもネット上の情報なわけですけれど…

こうやってちゃんと調べてみると、 絞りの作動量がおかしいなんていう話は見当違いだということがわかる。

なのだが、 なぜ一部で騒がれていたのか考えてみると、 そうなりそうな要因はある。

ライトボックスを撮影した画像を見てもわかるが、 このレンズではワイド端・テレ端ともそれなりに周辺光量の低下が認められる。 これ自体は、 特にフルサイズを使っていれば当たり前のことだ。

そして、 周辺減光にもいくつかのタイプがあって、 最周辺部でいきなり光量が落ちるものもあれば、 中心部からなだらかに徐々に光量が落ちていくレンズもある。 このレンズの、 特にテレ端は明確に後者で、 フィールドでの実写では周辺減光を感じにくい 。 反面、 パっと見では、 周辺が暗くなっているというより全体がアンダーであるように見えるかもしれない。

もちろん写真としては「パっと見」の印象は大事である。 写真を見た人に「本当はほとんどアンダーじゃないんだ」と力説しても無意味だろう^^; しかし、 何が起きているかわかったのだから、 私なら周辺減光の影響でアンダーに見えて困る写真では1段絞る。 それだけの話だ。

AEの話

ここまで「アンダー、アンダー」と書いているが、 これは 絞り開放付近では計算上の適正露出よりアンダーになるという意味合いである。 例えば外部露出計を使えばこの通りアンダーになるはずだ。 また、 マニュアル露出で、 絞った状態での撮影結果と同じ露出になるように開放付近の絞りとシャッター速度の組み合わせに変更した場合も、 期待した露出よりアンダー になると言える。

逆に、 AE撮影を含めたTTL測光では、 原理的に「絞り開放付近以外がオーバーになる」 と言う方が正確だろう。 AF一眼レフ で一般的なTTL開放測光では絞り開放の状態で測光を行うので、 口径食など絞り以外の要素で光量が変わるという前提では、 程度はともかく本当に適正露出になるのは絞り開放時だけで、 それ以外の絞りでは必ず相対的にオーバー露出になるとも言えるのだ。

例えば絞り優先モードで、 開放F値5.6のレンズを使っていたとする。 F5.6に設定したときにカメラが1/200というシャッター速度を返してきた場合、 光線状態が完全に同一なら、 F8に設定を変えると必ず1/100というシャッター速度が表示されるはずである。 これは、 カメラ本体は実際にF8まで絞った場合の光線状態は知りようがなく、 単純にF5.6とF8の差である1段分、 きっちりシャッター速度を下げるだけだからだ。

重要なのは、 この「アンダー」も「オーバー」も一つの現象(開放付近での口径食による減光)に起因しているのであり、 個体によって正反対の挙動をしているわけではないということ。

上記のことから、 実際には同一である現象について、 撮影方法によって「アンダー」と言う人と「オーバー」と言う人に分かれる可能性があるのだ。 それを言葉だけで受け取ると、 「個体によってアンダーになったりオーバーになったりとバラつく」 という間違った印象を受けかねない。 実際ネット上の掲示板等では、 そう思い込んでいると思われる書き込みが散見される。

くどいようだが、 実際はバラついているのではなくて、 どのレンズでも同じことが起きていると考えるのが理に適っているのだ。 そんなわけで、 「調整に出したら完治した」なんていう話は色々な意味で「???」である^^;

なお、 評価測光の類はその挙動がブラックボックスなので客観的には何も言えないはず。 特定のボディでどうなったという状況報告はできるだろうが、 同じボディを使っている人以外にとっては、 同じメーカーであっても機種によって挙動が違うブラックボックスを介した場合の話は耳を傾ける意味がないはずだ。 特定機種でAWB(オートホワイトバランス)だけを使って 「このレンズの色味は…」と語っているのと似ている。

右往左往している方へ…

このようなテストは自分の所有する1本のレンズでしか行っていないが …テストマニアじゃないので2本買えなんていうのは無理だ… フィールドで実写する限りでは、 友人所有の同製品(どちらも新品だが購入時期は数ヶ月違う)でも同じ傾向、 見た目では同じ程度となった。 この2本で全てを代表することはできないが、 私としてはどの個体も安定してこのような特性なのだろうと推測する。 断言する根拠にはならないが、 少なくともただのフィーリングより信憑性は高いはずだ。

それでも「自分の個体が不良なのではないか」という不安を拭えない人は、 このページでやったのと同じようなテストをしてみればいいのだ。 同じような結果になれば、少なくとも「あなたの個体だけが特別どうにかなってしまっている」のでないことがわかる。 それだけでも精神衛生上だいぶ違うのではないだろうか。

カメラに限らず、「何かが起きた時にはその場の対処と並行して原因も考えてみる」 …自分も含め、そういう習慣を身に付けておきたいものである。

キヤノン用 ニコン用

ご感想、アドバイス等、お気軽にどうぞ。

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