お遊びレンズ Cマウント FUJIAN 35mm F1.7 CCTVレンズ
![](DSC07046.jpg)
トイレンズのようなカテゴリーで売られているCマウントレンズをミラーレス一眼で使用してみた、
という結構普通な記事である。
レンズはFUJIAN 35mm F1.7 CCTVレンズというもの。
一応講釈を…
Cマウントのレンズは大昔からあって、
フランジバックが短いために一眼レフではどう足掻いても使えなかったが、
フランジバックの短いミラーレス一眼ではマウントアダプターを用意すれば使えるとあって一部マニアは熱中しているようだ。
そのため大昔のシネカメラ用のCマウントレンズは驚くほど高値で取引されていたりするが、
Cマウントレンズ本来のイメージサークルより遥かに大きな撮像素子を持つミラーレス一眼で使用する以上、
当時のレンズが持っていた味(特性)や画質を甦らせるというよりは 「意表を突いた写り」 に期待する 「ただのお遊び」だと思う。
で、 所詮「お遊び」なら、
わざわざ高いお金を出してそれらしいオールドCマウントレンズなんぞ買わなくても監視カメラや産業用のレンズが新品で手に入る。
もっとも、 産業用レンズのカタログを見ても 1/2型とか2/3型の素子に対応していると書いてあるだけでマイクロフォーサーズや
APS-Cでケラれ具合がどうなるかなんてことはわからない。
しかし最近は、
こういったお遊びのために産業用レンズを転用してミラーレス一眼で使えるトイレンズとして売っている業者がある。
今回試したFUJIAN 35mm F1.7 CCTVレンズなるものもそういった製品の一つ。
業者によって呼び名やレンズ本体の表記、 中には絞り羽の枚数が違う物もあるようだが、 基本は同じ物のようだ。
改めてCマウントトイレンズとは…
上に書いた通り現在のCマウントのレンズの大多数は監視カメラや産業用で、
設計時に意図しているイメージサークルはミラーレス一眼の素子サイズよりかなり小さい。
しかしトイレンズという名目で売られているものはミラーレス一眼で必ずしもケラれるわけではなく、 「まともに写る範囲が小さい」 とでも言うべき物だ。
結果として周辺部は普通じゃない写りになる、 ということ。
このFUJIAN 35mm F1.7もイメージサークルが大きく、 マイクロフォーサーズはもちろん
APS-Cでも周辺が暗くはなるがケラれずに使える。
この記事でもソニー NEX-6にCマウントレンズ-Eマウントボディ―のマウントアダプターを装着して撮影した。
作例
![](images/DSC07258_small.jpg)
平面を撮ると上の写真のように写る。
中心にだけピントが合って、 周囲に行くほどピンボケになっていることから、
像面湾曲が著しく大きいということがわかる。
撮り方によって様々な面白い写りをするレンズだが、 種を明かせばこれがある意味FUJIAN 35mm F1.7の唯一の特技?でもある。
![](images/DSC07186_small.jpg)
(この写真のみ、 構図の関係で4:3にトリミングしている)
![](images/DSC07138_small.jpg)
本来そこそこ同じようにピントが合うはずの横一列に並んだ人形だが、 FUJIAN 35mm F1.7は中心と周辺でピント位置が大きく異なるため、 真ん中の人形にだけピントが合い両脇の人形はボケて写
っている。
地味な使い方ではあるが、上手くすれば 「いかにもトイレンズ」 ではない作品らしきものにも使えるのではないかと思う。
こういう画面の大半がボケとなる構図では 「ただのボケ味の悪いレンズ」 にしかならない。
![](images/DSC07118_small.jpg)
しかし構図によっては、 同じ焦点距離・明るさの普通のレンズより大きなボケを得ることもできる。
![](images/DSC07121_small.jpg)
![](images/DSC07126_small.jpg)
上の2枚は普通のレンズで撮ってもボケる所は同じになる構図だが、
かなり大口径な単焦点レンズでなければここまではボケないのではないだろうか。
ところで、 像面湾曲が大きいということは周辺ほど手前にピントが合うことになる。
そのため下の写真では手前にある吊るし雛と背後にあるガラスケースの両方にピントが合っている。
普通のレンズで絞ったのと同じ効果ということになるが、 それなら普通のレンズで絞ればいいわな…。
![](images/DSC07137_small1.jpg)
FUJIAN 35mm
F1.7の平面を真正面から撮っても周辺はアウトフォーカスになってボケるという特性は、 被写体をミニチュア的に見せる効果がある。
![](images/DSC07131_small.jpg)
近接撮影ほどボケている範囲が広い・ボケが大きいという経験から、
普通ならピントが合っているはずの所がボケていると人間の視覚は物体が小さいと認識するのだろう。
ミニチュア風写真を「ミニチュア」と認識するのは人間の持つこの感覚(錯覚)によるものと思われる。
なおこの雛人形、 文字通りミニチュア効果で小さい物のように写っているが、 実際はガラスケースの横幅が50〜60cm位はあった。
また、 下の写真は上の写真から少し引いて撮ったもので、
普通はより広い範囲にピントが合っているはずである「引き」の構図の方がミニチュア感が強いように感じられた。
![](images/DSC07133_small.jpg)
下はミニチュア写真的な風景の例。
![](images/DSC07398_small.jpg)
![](images/DSC07446_small.jpg)
所詮ミニチュア写真なんてデジカメのミニチュア写真機能で充分じゃないかって?
わかってないなぁ、 それでは浪漫が無いのだよ(意味不明)
…ミニチュア風写真が流行ってそれだけのためにチルトレンズ買った人が世の中には結構いそうな気がして、
まぁ確かにそういう人にドヤ顔でミニチュア風写真を見せられたら 「で?」って言いたくなるけどね…
FUJIAN 35mm F1.7の良い所
APS-Cでもケラれない。
APS-Cではフルサイズ50mm相当に近い画角になる35mmという使いやすい焦点距離。
ゲテモノの類は最初は「面白い」と思っても出番がなくて放置というのはありそうな話だが、
日記で紹介している25mm F1.4の 「何を撮っても周辺がぐるぐる」
に比べればまだしもクセが少ないので使い所も多い。
自分としても
「トイレンズで撮りました!」 みたいな写真ではなく表現手法の一つとして活用したいと思っているのだけど、 さて…。
なお、 マイクロフォーサーズのボディーでは画像の中心部を切り出すことになるわけで、
このレンズのクセが弱くなる。
効果が極端ではなく使いやすいとも言えるが、 こういうレンズは極端な方が面白いのも事実なので、 やはりα(NEX)、 EOS-M、
富士フイルムXシリーズなどのAPS-Cサイズの撮像素子のボディーで使うのをお勧めしたい。
マウントアダプターについて
Cマウントレンズをミラーレス一眼で使用するためのマウントアダプターは、
Amazonあたりで探せば大量にヒットする。
α / NEX (Eマウント)用、 EOS-M (EF-Mマウント)用、 富士Xマウント用、 マイクロフォーサーズ用、
その他にニコン1用やPENTAX-Qマウント用もある。
マウントアダプターもそこそこの値段はするが、 安いのは中国から直送のもので、
10日〜2週間くらい待つ根気があるなら悪くない選択だと思う。
複雑な構造のものは安い物は壊れやすいといった違いがありそうだが、
レンズ側のマウントがねじ込み式の場合マウントアダプターにはロック機構などがあるわけではないので、 寸法精度が多少違う程度の差しかないはずだ。
今更ですが注意点
FUJIAN 35mm F1.7は本来写真用ではないレンズである上に、
ノーブランドに近い中国メーカーの製品である。
当然、 一般的な写真用レンズのような品質や性能を求めてはいけない。
絞りリングに書かれているというだけでほとんど意味のない絞り値表示、 絞れば完全に閉じる絞り(当然何も写らない)、
力を入れて回せば簡単に外れる前玉ユニット、 届いた時から鏡筒内に金属の削りカスが入っている等々…
NDフィルターの件
ところでこのレンズはF1.7とそれなりに明るいので、 晴天の屋外で撮ろうと思ったらNDフィルターは必須と言える。
恐らくミラーレス機の大半はシャッター速度が1/4000までなので尚更だ。
そもそも公式なスペックなんていうものは存在しないに等しいのでネジ径を知ることにさえ難儀するのだが、
手持ちのフィルターを当てがってみたところでピッタリはまるものはまずないだろう。
このレンズの先端は35mmという、 写真の世界では中途半端なネジ径なのだ。
幸い35mm-37mmのステップアップリングはAmazonやヤフオクで手に入れることができる。
「35mmのND4フィルター」なんていう物をピンポイントで探すよりは、
まだしも使い回しができる37mmに変換しておいた方が何かと便利だろう。
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