PowerShot G1X MarkIIにテレコンバーターTCON-17

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PowerShot G1X MarkIIにテレコンバーターTCON-17

キヤノンの PowerShot G1X MarkIIは、 マイクロフォーサーズとほぼ同じサイズの撮像素子に24-120mm相当、 F2.0〜3.9の明るいレンズを搭載したコンパクトデジカメ。
初代 PowerShot G1Xでは一歩物足りなかったズーム域 (28-112mm相当)、 レンズの明るさ (F2.8-5.8)、 接写の弱さ (テレ端で70cm)、 EVF非対応という弱点をことごとく潰し、 万能カメラに近いスペックになっている。

24-120mm相当というのは日常の撮影のかなりの範囲をカバーできる丁度便利な画角なのだが、 荷物を増やせない時などにデジタル一眼代わりに使うには望遠側が少し足りない。
もうちょっと望遠があればレンズ交換式のミラーレス一眼を置き換えられるのだけど…

…ということで、 コンパクトデジカメ全盛の時代にはお世話になったフロントテレコンバーターを今時の大型素子コンパクトデジカメで試してみることにした。

オリンパス TCON-17とは

TCON-17は、 デジタルカメラというものがやっと世間で認知され売れ始めた頃、 コンパクトデジカメに取り付けられる最も高画質なテレコンとして定番となっていたものだ。

元はオリンパスのレンズ固定式のフィルム一眼レフのオプションだった B-300という製品。
TCON-17は、 B-300の人気を知ってか知らずか、 当時のコンパクトデジカメ用にB-300とほぼ同じ仕様で発売された。

当時はデジタル一眼レフなど普通の人が買える値段ではなかったから、 デジカメに搭載されているレンズより望遠が欲しければこのようなアクセサリーを使うしかなかった。

当時画質最高と言われただけあって、 この手のテレコンとしては異例の3群5枚ものレンズが使用されている。
未だに公式HPに仕様が載っていることにも驚く。
あまり意味はないが取扱説明書も見ることができる。

TCON-17のようなレンズの先端に取り付けるテレコンバーターは、 一眼レフ等でレンズとボディーの間に取り付けるテレコンバーターと違い F値は変化しない。

今回の例の TCON-17は公称 1.7倍のテレコンバーターで、 PowerShot G1X MarkIIに装着した場合 120mm相当 × 1.7倍 = 204mm相当の画角を得ることができる。

PowerShot G1X MarkIIにテレコンを装着するには

まずとにかく必要なのが、 PowerShot G1X MarkII専用の 「フィルターアダプター FA-DC58E」である。
「このプラスチックの輪っかが定価2500円かよ!」
 と叫んだところでキヤノン様は聞く耳を持たないだろうから諦めが肝心だ。

構造としては、 伸び縮みする鏡筒の先端にバヨネット式でフィルターアダプターを装着することになる。
プラスチック製である上に薄っぺらいのでテレコンバーターを装着するには頼りないが、 鏡筒自体がヤワそうで、 変な力が掛かって壊れるならフィルターアダプターが壊れてくれた方が嬉しい ので良しとする。

その他に、 装着するテレコンバーターのネジ径によって ステップアップリングやステップダウンリングは当然必要になる。
TCON-17のネジ径は55mmなので 58mm→55mmのステップダウンリングを購入した。
基本的にはテレ端でのみ使用するものなのでステップダウンによるケラれは気にしなくて良いことが多い。

PowerShot G1X MarkII + TCON-17 の性能

TCON-17を始め各種テレコンが流行ったのはデジカメの画素数が 200〜300万画素の頃からだったと思う。
そんな時代のシロモノが今時の1000万画素オーバーのデジカメで使い物になるのか? と思う人もいるだろう。

確かに、 一般的な小型素子を搭載したコンパクトデジカメで使えば悲惨な結果になるかもしれない。
(まぁ、 普通のコンパクトデジカメはいくら画素数が多くても実際には500万画素分も解像してないように見えるが…)

しかしPowerShot G1X MarkIIの1.5型センサーで有効約1300万画素というのは、 画素ピッチは昔の 1/1.8型センサー ・ 200万画素より大きい。
つまりレンズに求められる性能はかなり甘いということだ。

PowerShot G1X MarkII + TCON-17 平面テスト

正直、 あまりこういうテストが真実を示すとは思っていないのだが、 とりあえずは平面的な被写体に画像中央でピントを合わせて重箱の隅をつついてみることにする。

上の画像の赤枠範囲をピクセル等倍で切り出したもの。 (中心から外側に向かってA, B, Cの順)

位置 A B C
F3.9
F5.6
F8

超ざっくり評するなら、 デジタル一眼で古い望遠ズームを使った程度の画質と言えるかもしれない。
これは、 画質が良いとは言えないけれどそれを心得た使い方をすれば作品撮りにも十分使える、 という意味。
望遠で撮る構図の多くは周辺部のシャープさがあまり問題にならないという事実もある。
これは後に載せる実際の作例からもわかるのではないかと思う。

デジタルテレコン?

最近なぜだか、 「なんとかテレコン」 だの何だの色々な名前を付けてデジタルズーム (要は画像をトリミングしてから拡大するだけ) を優れた機能のように 「見せかける」 のが流行っているようだ。
で、 PowerShot G1X MarkII にも普通のデジタルズームの他に 「デジタルテレコン」 なる機能がある。
言ってしまえば、 テレ端だけでなくワイド端からズーム全域で 1.6倍か2倍 (選べる) にデジタルズームするというもの。

何の役に立つのかと言うと、 PowerShot G1X MarkIIのレンズは、 例えばワイド端 24mm相当だと解放F値は F2.0で、 48mm相当辺りまでズームすると F3.5。
感度が同じなら光学的に 48mmにズームするより速いシャッター速度で撮れるという、 何か騙されているような微妙な機能だ。

一応この「デジタルテレコン」 1.6倍とTCON-17の比較画像を載せておく。 F5.6での中心部のみ。

  TCON-17 デジタルテレコン1.6倍
F5.6

言うまでもなくこの通り。
トリミングして1.6倍に引き伸ばしただけなのだから、 しっかり解像していたらむしろその方が一大事である。

まぁ、真ん中の各辺 1.6分の1を切り出しても500万画素位はあるので、 2L判程度までなら使えないことはない。
しかし、 大型素子のコンパクトデジカメ、 しかも1インチセンサー搭載の PowerShot G*X じゃなくてわざわざこの PowerShot G1X MarkIIなり PowerShot G1X なりを使っておいて2L判が限度というのも寂しい。

写真目的ではない旅行先などでちょこっとアップで撮るという程度なら無いよりは良いかもしれないが、 良い写真が撮れたら A4位にはプリントしよう、 なんて考えていると悲しいことになるかも。
記録画像がRAW、 RAW+JPEGなどRAWが含まれていると使うことさえできないけれど。

PowerShot G1X MarkII + TCON-17 実写作例

気を取り直して、 多少実際の撮影に近いサンプルを載せる。
なお、 最初にも書いたが、 基本的にはフロントテレコン使用時はズームのテレ端で使うのが常識だ。

たまにワイド寄りでケラれると文句を言っている人がいるが…。

下記の作例は全てテレ端でのもの。

 

F3.9 (絞り解放)

テレコンの周辺画質の低下は像面湾曲 (中心と周辺でピント合焦位置が異なる) の影響もかなり大きい。
そのため、 周辺部に主要被写体がある場合でもそこでピントを合わせればそれほど悪くないことも。
もちろんその場合は画像中心部はピントが合っていないことになるが、 望遠レンズで撮る構図の多くは画面の一部分にしかピントは合っていないものだ。
このページでも載せておいて何だが、 平面を撮った比較画像なんて正しい見方で見なければあまり意味は無いのだ。

 

F5.6

左の画像もそうだが、 遠景のコントラストが低いのは当日の 大気の状態の影響が大きい。

テレコンを試すにあたってはA4位のプリントで使えれば良いと思っていたが、 この位写っていればA4どころかA3でも問題ないはず。

     
 

F3.9 (絞り解放)

 

F5.6

     
 

F5.6

 

 

F3.9

     
 

F3.9 (絞り解放)

 

F3.9 (絞り解放)

PowerShot G1X (MarkII)の1.5型センサーやマイクロフォーサーズ程度の素子の大きさだと、 中望遠であっても F4や F5.6程度では思いのほか背景がボケない。
フロントに装着するテレコンバーターはF値はそのままで焦点距離が伸びるのでボケを稼ぐために使うこともできる。

     
 

F3.9 (絞り解放)

絞り解放・近接でフワっとするのはテレコンバーターの影響ではなく PowerShot G1X MarkIIの元々のレンズの特性。

 

F3.9 (絞り解放)

重箱の隅比較では絞り解放では色収差が見えたが、 比較的輝度差の大きい部分でも実写してみるとあまり気になることはない。

画質は思ったよりずっと安定している。

ただし、 逆光には極めて弱くなる。
フードが欲しくなるところだ。
TCON-17の先端にはフィルターネジは無いが、 77mmのプロテクトフィルター等を押し込むときっちりはまる。
落下しない位ぴったりの大きさだ。
ここにネジ込み式フードを取り付ければ逆光性能はかなり改善できそうだ。

PowerShot G1X MarkII + TCON-17 注意点

冒頭にある写真の通り、 PowerShot G1X MarkIIのボディーに大してかなり大きい。
しかもこれは沈胴状態なので、 電源を入れるとここから鏡筒が伸びるし、 望遠端では更に伸びる。

そして、 TCON-17の重さはカタログ上で 260g。
レンズの先にこんな重量物を取り付けることは想定されていないので、 電源が入っている時は常にテレコンに手を添える等の配慮をした方が良いだろう。
なおかつ、 不意に電源が切れたり時間が経ったりすればいきなり鏡筒が沈胴するので注意が必要だ。

私は、 撮影時はテレコンを手で支え、 電源 ON/OFFの際はそっと手を添えておくか、 真上か真下に向け るようにしている。
持ち運びの際は電源が入っているか切れているかに関わらず自重でレンズがほぼ真下を向くのであまり問題ないと思うが、 タイトなストラップ等を使っていると常に鏡筒を曲げる方向に力が掛かり続けることになるので避けるようにしている。

手ぶれ補正について

PowerShot G1X MarkIIの手ぶれ補正はレンズ内の光学式である。
同じブレ角度ならテレコンを装着しない素の状態より大きく補正しなければならないはずで、 手ぶれ補正の効果が低下するように思うのだが、 使っていて特に問題はなかった。
少なくともわざわざ手ぶれ補正をOFFにしたりする必要はないので使い勝手は悪くない。

TCON-17、そして…

TCON-17は古い製品なのであるが、 今も細々と生き続けている。
オリンパス STYLUS 1s 用のオプション品として用意されている TCON-17X がそれだ。
旧 TCON-17とは一見してコーティングが異なるようなので、 弱点である逆光性能は今の時代らしく良くなっているかもしれない。

しかし正直なところ高い。
高倍率ズーム搭載のコンパクトデジカメに装着している人もいるようだが、 メインのカメラとして望遠が欲しいならテレコンなんか使って頑張るより安いレンズ交換式カメラと望遠ズームを買った方が余程お得だと思う。

しかし昔のコンパクトデジカメが主流だった時代と同じく、 PowerShot G1X MarkIIのようなカメラを万能カメラにするにはこれしか手段がない。

もうちょっと安く上げたい人には、 パナソニックの DMW-LT55という製品もある。
正確なところは不明だが TCON-17とほぼ同じ製品らしい。
確かにスペックはそっくりだ。

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