デジタル一眼と古いAFレンズの互換性(ROM問題)
2011/6/11
フルサイズのEOS-1DsでEOS7対応(デジタル非対応)のシグマレンズが動作することを確認しました
タイトルの通り、ここで言う古いレンズとは「古いAFレンズ」のことで、 マウントアダプター等を使用する話ではない。
ネット上では、「○○という古いレンズは××(ボディ)で使えますか」という質問を良く目にする。
使えないことがあるという事情は聞いたことがあるけれど具体的にはどういうレンズが使えてどういうレンズが使えないのかがわからない、 ということ
だろう。
レンズを発売しているメーカーがその情報を公表していないのだから無理もない。
ネット上を探せばまとめてある所はあるのだが、 必要な人にとっては重要な情報なのに見付けにくい。 そこで、 一助として当サイトでもまとめてみることにした。
なお、 互換性問題はEOSだけでなくαなどにもあるのだが、 私はデジタル一眼レフはキヤノンEOSしか使っていないため、
今のところはEOS Digitalに関する内容に限定した。
「デジタルで使えないレンズ」とは?
「デジタルで使えないレンズ」は、わかりやすく言えば、レンズメーカー製の一部の古いレンズである。 「使えない」とは、
具体的には(私が自分の目で確認した範囲では)デジタルボディで使用すると下記のような症状が出るというもの。
ここでは、各レンズメーカーでのデジタル対応状況についてまとめてみる。
キヤノン純正EFレンズの場合
当然と言えば当然だが、
純正EFレンズに関しては、 どんなに古いものでもボディ・レンズの全ての機能が問題なく動作する。
「当たり前だ」という声が聞こえてきそうだが、当たり前のことほど、知らない場合に知る手段がないものだ。
古い非USMレンズが動体予測AFにどこまで追従するか、 といった話は別問題として、 最初のEOSが登場した頃の製品でも最新のデジタル一眼レフで問題なく使用でき
ている。
余談だが、 「古いレンズはデジタルじゃ使い物にならない」なんて言う人もいる。
しかし、 実際に自分が使ってみた印象として、 古いレンズでも大抵のものは別に不自由もなく使える。
デジタルで逆光に弱いと言われるレンズは、程度は多少違ってもフィルムで使ってもやっぱり弱いレンズだろうし、
解像に関しても、 特にフルサイズデジタルなら同じサイズで鑑賞する分にはフィルム時代と要求性能は変わらないはずなのだ。
タムロンの場合
純正と同じレベルで、最も安心して古いレンズを使用できるのがタムロン。
タムロンのAFレンズに関しては、古いものでもデジタルで不具合が出たという話は聞いたことがない。 何も考えずに購入してもまず問題はない。
例外として、 AF28-300mm F3.5-6.3 VC (Model
A20)とEOS40D以降のボディの組み合わせでAIサーボAFを使用した際に連写速度が低下することが公式にアナウンスされている。 また、
このレンズの手ブレ補正機構は対応ボディに制限があるが、 新しいボディとの互換性という話ではない。
トキナーの場合
1998年のEOS3発売時に、 それ以前に出荷されたレンズで不具合を起こしたようだ。
それ以降は対応ボディに関する不具合は聞かないので、 EOS3で動作するものであればデジタルでも動作すると思われる。
トキナーの場合対策は有償で、費用は数千円〜1万円程度とのことだ。
修理不能レンズ一覧に掲載されていなければ今でも修理が可能かもしれない。
ただし、不具合が起きる可能性のあるレンズ=1998年以前に発売された製品はほぼ修理不能と思われるので、やはりデジタル非対応のものを手に入れてしまうと対応は困難と思われる。
真打ち(笑)シグマの場合
ここでやっと、 「デジタル非対応の真打ち」とも言えるシグマの登場である(笑)
古いレンズを使いたいときに最も厄介なのがシグマ。
シグマはEOS用に関して、 次の各段階で既存のレンズが動作しない不具合を起こしている。
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EOS55発売時 (1995年)
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EOS3発売時 (1998年)
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EOS7発売時 (2000年)
(この後EOS D30、 初代EOS-1D、 EOS D60、 初代EOS-1Ds発売)
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EOS10D発売時 (2003年) ※
※10Dの約半年後('03/8)に登場した初代Kiss Digital発売時の可能性もあり
ただし、全ての製品が全ての段階で引っかかるというわけではないようだ。 また、このリストには漏れがあるかもしれない。
話をデジタルに限定すると、 EOS7対応済みのレンズはデジタル一眼レフであるEOS
D30/D60/1D初代/1Ds初代では動作するようだ。 しかし、 これをクリアしていても、 EOS 10Dを含むそれ以降では不具合が発生する製品もある。
現物をチェックできる場合は問題ないが、 オークション等でKiss
Digitalより前のデジタルボディで動作したと書かれていても、 それより新しいボディでは動作しない可能性があるということだ。
なお、シグマは不具合が起きる度に無償修理(いわゆるROM交換)で対応してきたが、 少なくともEOSに関係するものは既に打ち切られているようだ。
つまり、 今、 自分が使用しているボディに非対応のシグマ製レンズを手に入れてしまうと、 古いボディを手に入れない限り使用するのは絶望的ということ。
要するにシグマの場合…
販売店で購入する際は、 2010年現在、 「デジタル対応」を明記してあるものを選ぶか、デジタル一眼に対応しているか尋ねれば良い。
ある程度ちゃんとした中古販売店では事前にデジタルへの対応をチェックしているか、 問い合わせればチェックしてくれる。 この際にEOS D30やD60、 1D、
1Dsで確認するということはまずないと思われるので、 動作可能という結果ならば現在発売されているボディでも不具合は起きないと考えられる。 初代Kiss
Digital以降、 新たな不具合は起きていないと思われるからだ。
ネットオークション等の場合は、 初代Kiss
Digitalを含むそれ以降のボディで動作確認されていれば確実と考えられる。
逆に、 チェックに使用したのがEOS 10D以降のボディで、 その結果「デジタル非対応」とされていても、 製品によってはD30やD60、初代1D、
初代1Dsでは動作するという可能性も残されてはいる。
追記
2011/5/10
上記の裏付けとして、 初代Kiss
Digitalを含むそれ以降のデジタル一眼で絞るとエラー99となるシグマ24mm F2.8がEOS
D60では問題なく動作することを実際に確認した。 2011/6/11
同じレンズで、 初代EOS-1Dsもエラーが出ず絞りも正常に作動することが確認できた。
つまりEOS-1Dsは、 一番多くのシグマの古いレンズを、 しかも当時の画角そのままに使える唯一のEOS
Digitalということになる。 |
古いシグマのレンズをデジタルで使いたい人は…
ベストは初代EOS-1Ds
銀塩時代からシグマの対応修理を受けていないレンズを多数保有している方が
デジタル写真でもそれらのレンズを活用したいと思うなら、 ベストな選択は初代EOS-1Dsということになる。 上記の通り、 銀塩時代にEOS7に対応したレンズであれば、
フィルムと同じ画角でデジタルで使える。
画素数は最新フルサイズ機に比べれば少ない1100万画素だが、
古いレンズを頑張って使おうという人なら必ずしも最高の画素数を求めてはいないだろう。
私自身も1280万画素のEOS5Dで全然不満はない(5Dでは古いレンズは動かないけれど)。
なお、 MarkIII以前のEOS-1D/1Dsは操作体系が現在のEOS
Digitalと全然違うとか、 フラッグシップたるEOS-1の系統なので大きい・重いといった点は気になるが、
何しろフラッグシップであるだけにボディ性能は高いので我慢してもいいかな… と私は思ってしまった。
純正でスプリットスクリーンも用意されているので、 古いMFレンズをフルサイズで使うのにも向いていると思う。
そして何より、 当時は高嶺の花だった1Dsも、 今は驚くほど安い。 中古相場はEOS5Dと同じ程度で、
EOS5Dが欲しい人がどちらにしようか悩む対象にはなり得る。
APS-CならEOS D60
フルサイズに拘らずAPS-Cで構わないのならばEOS D60がベストということになる。
EOS-1Ds同様、
EOS7で使えるレンズであれば動くはずであることと、 画素数が600万画素と今でも実用的と言えるスペックだからだ。
初代EOS-1Dは微妙…?
他に初代EOS-1Dも同じ条件でレンズが使えると思われるが、
APS-Hサイズの素子というのはやはり中途半端であることと、 415万画素というのは実用上色々と制約があって用途が限定されるように思う。
私は無駄な高画素が嫌いなのだが、 昔使っていた300万画素のEOS
D30はA4プリントでもトリミングの余地が全くないため、 ヘタレと呼ばれても構わん! と600万画素の10Dに買い換えたという経緯がある^^; 逆に、
プリントしてもせいぜいA4までなので、 EOS D60や10Dの600万画素で十分だと思った。 最近のシグマのレンズ
デジタル一眼レフの普及に併せて、シグマは既存ラインナップの総DG化を行った。
「DG」ではデジタル一眼レフの撮像素子に合わせて逆光性能を向上させたということになっているが、DG以降は互換性問題の原因となるプログラムやデータを格納しているのがROMではなくEEPROM(電気的に消去・再書き込みが可能なROM)やフラッシュメモリーに変更されたらしい。
シグマだけが際立って多く非互換問題を起こすことは大きな問題だが、その対策はROM交換より容易になるはずで、大半は部品交換を伴わず内部のプログラムやデータを書き換えるだけで済むはずだから、シグマにその気があれば「部品(ROM)払底のため対応不可」ということは起きにくくなるはずだ。
期待したい。
番外編?^^; コシナの場合
あまり知られていないが、コシナもAFレンズを発売していた(もしかしたらまだ売っていたりして…)。 独特のスペックと驚きの価格で
発売されていたので、
私と同じようなB級レンズ愛好家^^;
なら多少なりとも興味があるのでは?
コシナのAFレンズは雑誌等でもほとんど取り上げられないマイナーな存在ゆえ、 デジタルへの対応状況は全くわからない。 ただし、
私はコシナのAFレンズでデジタル非対応と書かれた物件を見たことはないし、
お店で実際に1,2本試させてもらった限りでは古い製品でも不具合が起きることはなかった。
中古での流通量も非常に少ないので知る必要もないのかもしれないが、 B級レンズ愛好家(笑)としては
興味はある(興味本意でしかないが^^;)。
デジタル対応チェック方法
デジタル一眼レフで使用できるかどうかを判別する方法としては、自分のボディに対象のレンズを装着して以下のテストを行うのが簡単で確実。
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AFを作動させてみる
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絞り優先モードで、 絞り開放と、 例えば2段程度絞り込んだ状態で同じ構図で撮影して画像を確認する
不具合があるレンズでは下記のどちらかが起きる。
私の経験では、この2項目をチェックすればほぼ確実である。
「時々エラーが出る」というレンズもあるらしいが、製品としての互換性の問題なのか個体差なのかはっきりしない。
絞りの作動チェックは、 理屈ではマニュアル露出で同じEV値になる組み合わせ(例えばF2.8
1/400とF5.6 1/100)で試写する方が確実ではあるが、 上記の方法でまず問題ない。
また、絞りの作動の確認は、 絞り開放以外に設定してレンズを覗き込んでプレビューボタンを押してもいいが、
エラーにはならないが実際は絞りが作動しないというものもあるので、 結局は絞りそのものを目視する必要があり、特に広角レンズでは見えにくいこともある。
フィルムカメラでフィルムが装填されている場合はこの方法で確認するしかないが、デジタルなら実際に撮影する方が遙かに簡単でわかりやすい。
最後に
まとめてみると、レンズメーカー製AFレンズとボディへの対応状況は想像以上にややこしいことになっている。
…と言ってもほとんどがシグマ製のレンズに関する話だが…
なので、ここに書いた情報にも色々と間違いがあるかもしれない。
しかし、 何はともあれネット上に情報が残っている間にまとめておかないと今後調べることも困難になりかねず、 まずはわかっている範囲で掲載させて頂いた。
誤りのご指摘は大歓迎なので、情報をお持ちの方はご連絡頂ければ幸いである。
なお、 情報をまとめるにあたっては、 実際に流通している中古品の情報に加えて、 特に「Impressions
by KEN」さんの下記のページを参考にさせて頂いた。
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