EOS5Dレビュー 第2回 - 雑感・ファインダーについて
EOS5D購入後、約9ヶ月が経ちました。それなのにレビュー第2回って…^^;
前回は、フルサイズデジタル一眼への移行にあたっての妄・・・いや構想を書きました。
そして、ちゃんと予告通りのレンズ等を揃えましたよ。
APS-C用レンズは比較的新しく、また人気があるため高く売却でき、逆にそれよりちょっと古いフルサイズ用レンズは実力以上に安いため、純粋な「移行」という点では全く経済的負担無しで乗り換えられました。
これは良く考えると驚くべきことです。
反感を買うのを覚悟で言ってしまうと、「今のAPS-Cでは逆立ちしてもEOS5Dの足元にも及ばない!」のですから。
あ、石や棒は手になさらないように…あ〜!
…というわけでとっくに無事に乗り換えには成功しましたので、今さらEOS5Dについて色々書くことにしました。 本当に「今さら…」ですが、腐っても(画質的にはまったく腐ってませんが)フルサイズということで
これから入手しようという方もおられるでしょうから、ファーストインプレッション、画質、ファインダー関係について書きます。
雑感
使い始めてまず感じたのが、「手ブレ写真が多い!」ということでした。
1/焦点距離どころか、その2倍くらいのシャッター速度でもブレがわかるコマがありました。
それまで使っていたEOS20Dでは1/換算焦点距離でほぼブレがわかる写真はありませんでした。 EOS20Dに比べて画素数が増えたことも一因だとは思いますが、どうもそれだけではなさそうです。
EOS5Dを手にすると、最初はすごくおとなしいカメラのような印象を受けます。
これは、シャッタータイムラグやファインダー消失時間が比較的大きい(鉄道などでも困るほどではないですが)ことから、ゆったりした感じを受けるからだと思います。
また、EOS20Dまでのシャッターボタンが短いストロークでカチっと押し込むタイプであったのに対して、EOS5DではEOS1系と同じような、フワっと押すと半押しになって、そこから少し力を入れて押し込むとシャッターが切れるタイプになっています。
どちらが良いかは別として、そのタッチからもゆったりした印象を受けます。
しかし、実際はAPS-Cの機種よりも大きなミラーがバッタンと動いているわけで、実はそれなりに大きなミラーショックがあります。
ソフトな感触で安心してしまう上に実際は大きなミラーショックということで、これを知っていないと手ブレを誘発しやすいと思いました。なお、ちょっと触ってみたところでは、ミラーショックはEOS5D
MarkIIではやや改善されているようです。
個人的には、EOS20Dタイプの方が手ブレという点では有利だと感じます。
EOS5Dに関するムックでは同じくEOS20Dと比較して正反対のことを書いてあるものもありますので人それぞれと言ってしまえばそれまでですが、せっかくの高画質を生かすためにも手ブレには細心の注意が必要です。
余談。実際に見たわけではありませんので何の根拠もありませんが、原理的にはEOS20Dまでは半押しは板ばねを使い、その先のレリーズにはマイクロスイッチを使っている感じです。
それに対してEOS5Dでは、半押しはばね定数の低い板ばね、レリーズはばね定数の高い板ばねで行っている感じです。
これは純正のリモートスイッチ(これは実際に見たことがあります)と同じ原理で、原始的ゆえに信頼性は高いと言えます。
マイクロスイッチの耐久回数はせいぜい数十万回だと思いますが(実際EOS10Dではシャッターボタンの作動不良というウィークポイントがありました)、ばね式ならば板ばねが折れるか腐食して導通しなくなるまで大丈夫でしょう。
画質
画質は、噂通り素晴らしいです。 カメラ内JPEGの画質ではEOS5D MarkIIも敵ではありません(言ってしまった!)。
EOS5D MarkIIより画素数が少ないこともあり、1ピクセルがしっかりしている感じです。 後継のEOS5D
MarkIIの画像をEOS5Dと同じ1280万画素に縮小してもEOS5Dに勝てないのではないかと思います。
MarkIIの遠景の木などはまるでブロッコリーのよう…。
ただし、RAWをDigital Photo
Professionalで現像した場合、EOS5Dではカメラ内JPEGから飛躍的には良くならないのに対してEOS5D
MarkIIはそれなりに画質が良くなりますので、この場合は同じ画素数で比較すればMarkIIの勝ちかと思います。
逆に、EOS5Dはカメラ内JPEGでもかなり高画質であり、ここまで来ると、撮影時にしっかりと露出を決めればJPEG撮って出しでも十分ではないかと思ってしまいます。
実際、このサイトのレンズレビューではEOS20DまではRAWで撮影したものを掲載していますが、EOS5Dで撮影したものはカメラが生成したJPEGをそのまま載せています。
不自然にノイズを消して輪郭強調で誤魔化しているようなことが無いので非常に自然で、その上しっかりとシャープです。
ノイズリダクションとシャープネスのバランスが良いようで、輪郭の自然さに関してはRAWをDigital Photo
Professional (DPP)で現像するより良いかもしれません(DPPの輪郭強調処理が下手なだけという話もありますが^^;)。
現像方法による画質の違い
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カメラ内JPEGの画像。 舟の底のゴザ、その横の木目あたりを見てください。 |
同じコマのRAWをDPPで現像。 パラメーターはデフォルト。
NRの輝度ノイズ低減が掛かるためJPEGよりディテールが失われているように見えます。 |
同じRAWを同じくDPPでNR無しで現像。
これならディテールの描写はJPEGより上でしょう。 しかし舟のヘリなどのエッジはカメラ内JPEGの方が上品な気が。 |
高画素機の「ヌメっと塗り潰した所に思い出したように一部だけディテールが出ている」気持ち悪さがありません(私はどうもこれが苦手で…)。
まさに高画素コンパクトデジタルカメラの正反対ですが、最近は一眼レフでも高画素化でそのような傾向にあるのは残念です。
大きく印刷するといった理由でどうしても2000万画素オーバーが必要という方でなければ、画質だけで見るなら今でもEOS5Dを選ぶ意味はあります。
実は私もEOS5D MarkIIに乗り換えられそうな機会はあったのですが、2000万画素は必要無かったのと、EOS5D
MarkIIの画素数を生かそうとすればJPEGではまったく駄目で、そうするとあまりにもデータが大きい。かと言ってsRAWで撮れば画素数はEOS5D以下でなおかつ画質も劣ると聞きますので見送りました。
もちろん新しいカメラにはライブビューや動画といった新機能がありますが、純粋に写真を撮るのであればこれらは別に無くても構わない機能です。
元々EOS5Dを使っている人にとっては、そのために画質を犠牲にするというのは本末転倒でして…。
ただ、フルサイズ素子での動画は人によってはものすごい価値があるわけで、そのために「買い増し」するのなら良いのですが。
ライブビューは三脚使用時のマニュアルフォーカスに便利という話もありますが、そもそもそれはMFしにくいことからの「逃げ」の手段であって、まずはファインダーを改善するのが先でしょう。
後で書きますが、スクリーンをスーパープレシジョンマットに交換していることもあって、私は三脚使用時にもライブビューがどうしても欲しいとは思いません。
おっと、話が逸れました。EOS5DのJPEGが高画質であるという話。オートホワイトバランス(AWB)が好ましい味付けになっていることもこれに拍車をかけます。
複雑な人工照明下ではそうもいかないのかもしれませんが、
普通の蛍光灯下での屋内撮影や屋外での撮影ならば、色味が気に入らないということはほとんどありません。
もちろん、夕焼けなど印象を重視する写真はRAWで撮影してレタッチした方が有利なのは変わりませんが。
で、結局私はRAWで撮っています。 RAWで撮っておけば将来他の現像ソフトで現像してみるといったことができますからね。
しかし、EOS20Dの頃は常にRAWのみであったのに対して、EOS5DではRAW+JPEGで撮っており、旅行の記念写真など、こねくり回すよりも素早くプリントしたい写真はJPEGをそのまま使っています。
レタッチしない限りJPEGで十分ということでもあります。
高感度撮影ではまた別の要素がありますが、それはまた後日…(ってまた半年後とかじゃないだろうな?^^;)
なお、ここではこれ以上のサンプル画像は載せませんが、レンズレポートにはEOS5Dで撮影した画像がたくさんありますのでそちらをご覧下さい。
ファインダー
私がフルサイズにした一番の理由とも言えるファインダーについて。
当然ながらファインダーは大きく、APS-Cとは天地の差です。 倍率は0.71倍(50mmレンズ使用時)で銀塩EOS
Kissレベルでしかありませんが、それでもEOS1D系の約0.7倍を僅かに上回ります。
ちなみにEOS20Dのファインダー倍率は0.9倍(同じく50mmレンズ使用時)ですが、同じ位置から同じ構図で撮ろうとすればフルサイズの1/1.6の焦点距離のレンズを使うことになります。
結果として実質的なファインダー倍率も1/1.6ということになり、フルサイズでの約0.56倍のファインダーと同じように見えることになります。
つまり、実質的にはEOS5Dの方が30%近くファインダーが大きいことになります。
あと、私はあまり気にしませんが視野率は上下左右とも約96%で、あまり高いとは言えません。
EOS20Dでも約95%でしたので別に大きな問題だとは思いませんが、100%でない以上いくらファインダー像で気を付けても余計なものが写るということです。
ただ、大幅なトリミングは別として、デジタルならば画面の隅に何かが写ったくらいならトリミングしてしまえばいいので、やっぱり私にはあまり重要な点ではありません。
フォーカシングスクリーン
で、めでたくファインダーが大きくなったところで、肝心のマニュアルフォーカスのしやすさが向上するのかどうかです。
これは、EOSのスカスカなフォーカシングスクリーンのおかげで^^; あまり良くなったとは思えません。
つまりファインダーの大きさに関わらず根本的にダメってことです(苦笑)
EOS5Dの標準は「プレシジョンマット」で、EOS20Dと同じです。
EOS20DではEOS10Dまでの「ニューレーザーマット」よりピントの山が掴みやすくなったことになっていますが、実際は大差ありません^^;
しかし、この点に注目される方ならご存知の通り、EOS5Dはフォーカシングスクリーンの交換ができます。
Ee-Dは標準装備のものと同じプレシジョンマットの方眼入りで、Ee-Sがピントの山のわかりやすさを重視した「スーパープレシジョンマット」です。
マニュアルフォーカスを重視する方は必然的にこれに交換することになるでしょう。 実際、私は購入後すぐにEe-sタイプに交換しました。
これに交換するとマニュアルフォーカスのしやすさは劇的に向上します。 やはりMF重視派は絶対に交換するべきでしょう。 50mm
F1.4や135mm F2クラスでも自信を持ってMFできます。
問題は、どの程度までのF値のレンズで実用に耐えるかです。 メーカーでは「開放F値が2.8よりも明るいレンズ」を推奨しています。
これだけを見ると最も明るくてもF2.8である(EOS用の)ズームレンズには向かないことになってしまいますが、
実際に使ってみるとF2.8のレンズでも暗くて困るようなことはありません。
F5.6クラスのレンズの場合、確かに明るいとは言えませんが、屋外ではマニュアルフォーカスも含めて実用上は問題ないと思います。
しかし、標準的と思われる一般家屋の照明下だと、F5.6のレンズでは撮るのが嫌になるほど暗いです^^;
マニュアルフォーカスはつらいと思います。
とは言え、AF撮影なら実用上問題になるほどではありませんから、割り切ればF5.6クラスのレンズでも使えます。
なお、上記の明るいの暗いのという話は主観であり、相対的には当然ながらプレシジョンマットよりは暗いです。
あくまで実用上問題があるか無いか、ということです。
しかし、スーパープレシジョンマットに方眼入りが無いというのはどういうことでしょうかね…。
スクリーンの交換自体は簡単ですが、交換すればするほどホコリが入り込む可能性は高くなるので、方眼プレシジョンマットとスーパープレシジョンマットを交換しながら使うというのはなかなか難しいと思います。
ところで私は、EOS10Dでは旧ミノルタのα7用のスフェリカルアキュートマットスクリーンを加工して装着していました。
方眼入りを選べばAFフレームの辺りがボヤっと光るので、AFフレームの数が少なく配置が単純ということもあって何とか実用になっていました。
MFのしやすさが飛躍的に向上したのは言うまでもありません。
しかしEOS20DになってAFフレームが増えたため、これをやると中央以外のAFフレームは捨てなければなりませんでした。
さすがにそれは不便なので、泣く泣く標準のプレシジョンマットを使っていました。
EOS5DではフォーカシングスクリーンとAFフレーム(と部分測光範囲)を表示するのが別部品になりました。
つまり、スクリーンにAFフレームが刻まれている必要がないので、寸法さえ合わせればどんなスクリーンでも装着してちゃんと使えるということです。
しかし、スーパープレシジョンマットで十分に暗い(笑)ことと、かなりMFしやすくなることから、わざわざ純正オプション以外のものを使うメリットは小さいと思います。
確実にピント精度を出そうとすればスペーサーでコンマ1mm単位で調整しなければならなくなります。
ただし、スプリットタイプのスクリーンなどは苦労してでもやってみる価値はあるかもしれません。
この場合の露出補正値がどうなるかは全くわかりませんが…。
結局どうなの?
結局、乗り換えてどうだったか。 これはもう「大成功」です。
期待していたことが満たされ、心配していたこととその対策(主にフォーカシングスクリーンです)は予定通りの対処でクリアできました。
次回以降は、実際に色々な状況でEOS5Dを使ってみての感想を掲載する予定です。
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